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電気工事の現場から競馬を想う|パドックを見ないと馬券が買えない男の話

2026年4月19日(日)皐月賞デーのひとりごと

皐月賞の日に、俺は北海道のどこかで配線をいじっていた。

電気工事は待ってくれない。日曜だろうがG1だろうが、現場が呼べば行く。それが自営業というやつだ。天井裏にもぐって汗かいて、気づけば15時40分なんてとっくに過ぎていた。

前日に馬券を買おうと思えば買えた。データは出していた。ロブチェンが強いのはわかっていたし、追い切りも見て注目馬も記事にした。買う材料は揃っていた。

でも、買わなかった。

パドックを見ていないからだ。

データ上は「買い」でも、あの周回を見ていない馬券はどうしても気持ちが入らない。馬体の張り、歩様のリズム、目の光。テレビ越しでもいい、せめてスマホの中継越しでもいい。あの数分間を自分の目で確かめて、「よし、こいつだ」と腹を括る瞬間がないと、俺は馬券を買う気になれない。

理屈じゃないんだよな、これは。

データの方が当たるのは知っている。むしろ痛いほど知っている。

感情を排除して数字だけで組んだ馬券の方が、回収率は高い。パドックで「なんかイマイチだな」と切った馬が突っ込んでくることなんて日常茶飯事だし、「今日は仕上がってるぞ」と自信満々で買った馬がシンガリ負けすることだってある。

それでも、パドックを見たい。

電気工事の仕事は、図面通りにやれば理論上は完璧に仕上がる。でも現場に行くと、図面に載ってない配管があったり、壁の中の状態が想定と違ったりする。最後は自分の目で見て、手で触って、「これでいける」と判断する。その感覚で30年やってきた。

競馬も同じなんだと思う。データは図面。パドックは現場。

図面だけで仕事する電気屋がいないように、パドックを見ないで馬券を買う自分が、どうしてもしっくりこない。

結果を見たら、ロブチェンがレコードで逃げ切っていた。松山弘平、2週連続のG1勝利。データ通りの決着。

「買っときゃよかった」と一瞬だけ思った。

でも、たぶん来週もパドックを見てから買うんだろう。データで当たりを逃しても、自分の目で見て納得した馬券の方が、当たっても外れても後悔がない。

そういう競馬が、俺は好きだ。

来週は現場が落ち着く予定。天皇賞(春)の週にはちゃんとパドックを見て、堂々と馬券を買いたい。

それまでは、データだけ黙々と出しておく。


かめきち|北海道の電気工事士。道内を飛び回りながら競馬データを出し、パドックを見てから馬券を買う派。

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